万博ジュニアサッカースクール

100本のパスと1本のシュート

2021年5月29日

⑦49年前の試合を見ています

現代のサッカースタイルに対して、昔はどんなサッカーをしていたのだろうか。昔、自分が憧れたサッカーのスタイルはどんな形だったのだろうかと気になり、1972年ヨーロッパ選手権、西ドイツ対イングランド戦を観戦しました。GKは西ドイツがゼップ・マイヤー、イングランドがゴードン・バンクス。この名前だけでシブイ、懐かしいしと思われる方は、サッカーの歴史とともに正しい人生を歩まれている証拠です。

 

この試合では不思議なことに、両GKのユニホームに背番号が付いていません。西ドイツは、ベッケンバウアー、ミュラー、シュバルツェンベック、ブライトナー、ヘーネスといったバイエルン・ミュンヘンの選手が主力。中盤にはボルシアMGの「将軍」ネッツアーとビンマーの「ホルシアコンビ」が起用されており、当時は1FCケルンのオベラートとフローエの「ケルンコンビ」とどちらを中盤で起用した方が最強かと結構話題になっていました。ネッッアーは「将軍」「センチメートルパス」と呼ばれた天才肌のゲームメーカー、オベラートはプレーの95%を左足だけで行う「左足の芸術家」と呼ばれたゲームメーカー。早い話、両者とも恐ろしく上手で凄い選手です。

 

一方、イングランドは「伝説の番組」ダイヤモンドサッカーのイングランドリーグで紹介された選手、ムーア、ピータース、チバース、リー、ボールといったメンバーで、CFのチバースは今年の高校サッカーで「これって戦術?」と話題になったロングスローを何度も放り込んでいました。当時の守備はマンマークが主体です。西ドイツのブライトナーは、本来、左SBなのですが、自分のマーカーが、ボジションチェンジを行うとブライトナーも当然のように逆サイドに現れています。リベロと言われたベッケンバウアーは、守備の際には最終ラインのカバーを行い、攻撃時は現代サッカーでのボランチ、アンカーといったポジションに上がり、最終ラインより常に前に出てプレーしているのが印象的です。

 

当時のイングランドは、中盤でのパス交換や意外性が少なく、相手ゴール前で陣取る強靭なCFに向けてサイドからハイクロスを放り込み、CBとの空中戦で競り勝ったボールを拾うというスタイルが展開されており、イングランドのサッカーファンもそういった戦いを好んでいました。イングランドは、このハイクロスのスタイルを続け代表チームの不振が長く続きます。

 

西ドイツの緑のセカンドユニホームも懐かしく、上から緑・白・緑となっており、イングランドの白のスリーライオンもシンプルですが伝統を感じます。イングランドは上から白・紺・白となっており、両チームこの組み合わせは白黒テレビでも見やすいように配慮されたものです。

 

49年前の試合を観戦し率直に感じたことは、先ずどの選手も本当に良く走っているということです。攻守の切り替えはもちろん、取られたボールは自分で追って奪い返す、あらゆる場面でのプライドを賭けた厳しい1対1などが繰り返されおり、その中に「うわっ上手」といった現在でも十分通じる技術が輝いています。画面の中には当時少年だった自分の憧れた選手たちが、時代を越えて素晴らしいサッカーを展開しており、全く色褪せることもなく、懐かしい気持ちと新鮮な思いを改めて抱くとができました。(了)